2014年10月30日
言論への暴力、言論の暴力(二)
「朝日新聞問題」日本共産党の見解

 

24日の毎日新聞によりますと、
“従軍慰安婦報道に関わった元朝日新聞記者の植村隆氏(56)が勤務する北星学園大学(札幌市厚別区)に脅迫電話がかけられた事件は23日、新潟県燕市の施設管理人、上村(かみむら)勉容疑者(64)が威力業務妨害容疑で逮捕された。逮捕容疑以外にも、植村氏や別の朝日OBの勤務先に対する脅迫や威圧的な行為が相次いでおり、関係者は「言論に対する脅威だ」と危惧する。植村氏は「容疑者逮捕の報にホッとしている。しかし、脅迫文との関連はわからず、今後の捜査を見守りたい。いずれにしても、このような卑劣な行為は許されない」と話した。”
とあります。

犯人が迅速に捕まって、よかったと思います。私はこのような卑劣な行為を嫌う者です。拙文がどれほどの効力を持っているか知りませんが、まあ大したことはないでしょうが、それでも他を批判する者として、本名、私への連絡先は明らかにしてあります。名乗りを上げてからやるのです。闇討ちはしない。

ヘイトスピーチという言葉も、よく耳にします。「在特会」なる団体名も度々聞きます。最近では橋下大阪市長とやり合ったようです。よくは知りませんが、私の好みではありません。恥ずかしながらですが、私は下品がキライです。それに、「在特会」は、何となく日本人的でないような気がしています。

それはさておき、「ヘイトスピーチ」など、他愛ないと言えば言えるのです。大した害悪は与えない。真に恐ろしい者は、汚い言葉を使わない。朝日新聞“バッシング”なんて言われますが、朝日が数十年に亘ってしばいたのは日本国民です。「在特会」など赤子にも及ばない。その範囲と未来へ亘る時間的スパンにおいて、ほとんど治癒不可能な傷害を日本人に加えました。


日本共産党が機関紙「しんぶん赤旗」で今回の朝日新聞「慰安婦虚報問題」に関し見解を出しました。それを部分的に引用しながら考えを述べます。引用は部分的にしか出来ませんが、本文は全文、
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-27/2014092704_01_0.html
又は抜粋版(しんぶん赤旗日曜版)pdf
を、お読みになっていることを前提に記します。

朝日新聞は8月5、6日付で掲載した「慰安婦問題を考える」と題した報道検証特集で「吉田(清治)氏が(韓国)済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」と訂正しました。これをきっかけに、一部右派メディアと過去の侵略戦争を肯定・美化する「靖国」派の政治勢力が一体となって、異常な「朝日」バッシングが続けられています。見過ごせないのは、その攻撃の矛先が、「慰安婦」問題で日本軍の関与と強制性を認め、謝罪を表明した河野洋平官房長官談話(1993年8月4日――以下「河野談話」)に向けられていることです。

この書き出しで既に欺瞞があります。政党機関紙(プロパガンダ紙)として当然のことでしょうが。

  1. 朝日新聞が記事を取り消した→「これをきっかけに」

これは話があべこべで、多くの批判に耐え切れず朝日が“白状”したのでしょう。朝日の記事取り消しが批判を引き起こしたのではありません。

  1. 一部右派メディアと過去の侵略戦争を肯定・美化する「靖国」派の政治勢力が一体となって、

朝日を批判している中には、多くの“「靖国」派”が含まれています。毎日や中日ですら朝日を批判しています。朝日をまったく批判しなかったメディアはありますか?

  1. その攻撃の矛先が、「慰安婦」問題で日本軍の関与と強制性を認め、謝罪を表明した河野洋平官房長官談話(1993年8月4日――以下「河野談話」)に向けられていることです。

これも嘘です。今回の「朝日批判」があたかも河野談話否定を目的とするかのような書き方ですが、それでは「河野談話を否定しないメディア」(例えば毎日や中日)の朝日批判は説明できません。

ここまでが前置きで、「しんぶん赤旗」は朝日新聞虚報問題を離れて、河野談話問題へ入っていきます。しかし「河野談話問題」は、朝日新聞批判とは別な、巨大テーマです。河野談話についてこの場所で「赤旗」が長々と述べるのは、目眩ましです。

「赤旗」はこのようにも述べています。

この「吉田証言」については、秦郁彦氏(歴史研究家)が92年に現地を調査し、これを否定する証言しかでてこなかったことを明らかにしました(「産経」92年4月30日付)。また、「慰安婦」問題に取り組んできた吉見義明中央大教授は、93年5月に吉田氏と面談し、反論や資料の公開を求めましたが、吉田氏が応じず、「回想には日時や場所を変えた場合もある」とのべたことなどから、「吉田さんのこの回想は証言としては使えないと確認する」(『「従軍慰安婦」をめぐる30のウソと真実』97年6月出版)としました。

「吉田証言」の信ぴょう性に疑義があるとの見方が専門家の間で強まり、一方で元「慰安婦」の実名での告発や政府関係資料の公開などによって、「慰安婦」問題の実態が次々に明らかになるなかで、日本軍「慰安婦」問題の真相究明のうえで、「吉田証言」自身が問題にされない状況がうまれていたのです。

これもおかしな話で、であるならば何故、今更、

「吉田証言」の記事を取り消します

「しんぶん赤旗」は、吉田清治氏の「証言」について、日曜版92年1月26日号、日刊紙93年11月14日付でそれぞれとりあげたほか、日刊紙92年1月17日付では著書を紹介しています。93年11月の記事を最後に、「吉田証言」はとりあげていません。
(中略)
「吉田証言」は信ぴょう性がなく、本紙はこれらの記事を掲載したことについて、お詫(わ)びし、取り消します。

1992年4月30日の産経・秦郁彦氏記事から22年を経て、今、「吉田証言」を取り消すのでしょうか。

問題はそこにあるのです。朝日批判をしているのは、正にその点なのです。過失で起こした事故も、放置すれば過失で済みません。誤報は、取り消さぬことによって「捏造」になるのです。「過失」でなく、「意志」になるのです。朝日の明確な意志、悪意ある意志を、批判しているのです。河野談話批判とは系列の異なるものです。

今回の「しんぶん赤旗」記事、「歴史を偽造するものは誰か」は、始めと終わりに「吉田証言」があって、真ん中大部分に「河野談話」があります。しかし目的は、かつて赤旗が扱った「吉田証言」関連記事のさりげない取消で、河野談話は烏賊の墨吹です。本体を隠して逃げようとするものです。

朝日の捏造記事は言論の暴力でした。暴力事件として捉えなければことの本質は分かりません。日本共産党は、その「共犯者」ででした。


[追記]
しんぶん赤旗日曜版11月2日号に、日本共産党志位和夫委員長が訪韓、歓迎されたとあります。私の理解では、共産党が韓国世論に支えを求めたのだと思います。


それにしても「隔世の感あり」とはこのことですね。朴正煕大統領の時代、韓国を暴虐政治の見本のように語っていたのは、朝日新聞であり岩波書店であり、日本共産党、社会党でした。産經新聞は一貫して、朴政権に好意的、もしくは置かれた状況に同情的であったと思います。朴政権への評価は、その「隣国」への評価と一体であったはずです。当時の各メディア、言論人、政党が、韓国の「隣国」をどう評価をしていたか、点検すれば面白いと思います。

 

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