2014年9月21日
月刊誌、新聞紙、機関紙、読み較べ
「朝日新聞問題」

 

月刊誌の10月号を、ほぼ全部、購入しました。私には定期購読している月刊誌はありません。都度、面白そうなのを買うわけです。ほぼ全誌買うというのは三度目です。

一度目は、9.11アメリカ同時多発テロ後
二度目は、3.11大震災、東電福島第一原発事故後

そして、今回。
朝日新聞の「慰安婦」記事捏造告白後、です。

今月号だけを言えば、(私は上の理由で継続的かつ全体的な評価は出来ないのですが)、朝日関連記事以外も総合して、「文藝春愁」10月号は充実していたと思います。
月刊誌を丸ごと全部読むことは、私はまずありませんが、文藝春秋の今月号はすべて読みました。

新聞もよく読みました。しばらくは朝日新聞も KIOSK での定期購読者になりました。
一時的に朝日販売数は増えたんじゃないですか? 少なくとも新しい読者は(瞬間的であれ)増えたと思います。

朝日を弁護する記事はさすが無かったですが、明らかに二派に分かれました。
「讀賣・産経」対「毎日・中日(東京)」
(今回朝日は「当事者」ですから)
原発、集団的自衛権、秘密保護法、憲法、・・・大体同じ組み合わせです。

日経は讀賣産経に近いですがさほど積極的でなく、毎日中日は適当にお茶を濁す感じでした。
ただ毎日は下手すれば火の粉が身に及ぶ危険を感じているようで、それなりの防災シートを張っている感じでした。

「しんぶん赤旗」「社会新報」は共に、正面からはまったく扱っていません。
「しんぶん赤旗」に少し触れた箇所があるので後で取り上げますが、社会新報では全く見当たらないのはどうしてでしょう。
福島瑞穂という朝日との共同作業者がいるのに。瑞穂さん個人のTwitterにも、関連発言が見当たらないように思います。ダンマリです。

私が興味あったのは、新聞は「毎日」「中日」、月刊誌は「世界」でした。

以上が前置で、以下、目に止まった文章についてコメントします。

 

1.9月17日付・産經新聞、佐瀬昌盛氏の「正論」より(抜粋) 原典

8月5日以降、朝日は袋叩きである。身から出た錆だろう。朝日は萎縮するかもしれない。その結果として、同紙は産経新聞や読売新聞の論調に近づくこともないとはいえまい。それをどう思うか。今まではそんなことはあり得ないと考えていた私だが、今回の事態を契機にこの問題で自問自答している。得られた答えはこうだ。
日本のプレスはやはり多彩でなければならない。われわれは全体主義国家に住もうとは思わない。複数主義的民主主義(プルーラリスティック・デモクラシー)にとり、多様性は断念不能である。ゴム印を押し続けているような全体主義的プレスは真っ平御免。新聞にはそれぞれの個性と独自色が不可欠である。どの新聞を読んでも論調が同じというのであってはなるまい。どこを切っても図柄は同じ「金太郎アメ」は願い下げだ。

この一節は誤解を呼ぶと思います。今回、朝日を批判する陣営は、朝日の「個性と独自色」を非難しているのではありません。「論調」の同じを求めているのではありません。
今回問題になったのは、為された報道に故意の「編集=強調と消去&貼り合せ」があったのではないか、裏付け調査をせず虚偽情報に飛びついたのではないか、ということです。「素材」が問題にされているので、出て来た料理が論じられているのではありません。最初期であれば、“誤報”の言い訳も可能だったでしょう。私は“虚報”と思いますが。

しかし、吉田清治証言を最初に取り上げた1982年9月2日から、32年
http://www.asahi.com/articles/ASG7L71S2G7LUTIL05N.html
植村隆記者の1991年8月11日記事から23年、になります。

前者が偽りであることは、韓国地元紙が報じ、平成4年3月には秦郁彦氏が現地調査の上、その虚偽を確認しています。(秦郁彦 『昭和史の謎を追う』下巻第41章1993.03、同 『慰安婦と戦場の性』第7章「吉田清治の詐話」 2項“かつがれた朝日新聞”1999.06、参照)
後者については西岡力氏が22年前、既に基本的な批判をしています。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140812/art14081203070001-n1.htm

「誤報」もしくは「虚報」は、疑念が生じた直後に検証し必用な訂正をしなければ、放置することによって「意図的」なものとなります。ごく普通の、私たちの生活の常識です。「うっかり」が“時”によって、「故意」になるのです。つまりその『質』が、放置(「時」)という意志・意図を与えることによって、「捏造」「プロパガンダ」に変質するのです。今回問題にされているのはそのことであって、朝日の「個性と独自色」「論調」ではありません。そんなことはどこも問題にしていません。『事実』の部分に「個性と独自色」があっては困るということです。

朝日は検証を行った理由について8月5日付の紙面で、「一部の論壇やネット上」には、
「慰安婦問題は朝日新聞の捏造だ」といういわれなき批判が起きています。」
と書いています。
虚偽もしくは不正確な報道を放置すれば、それは「捏造」に質を変えるのです。それを分からなければ、朝日は再生しないでしょう。

 

長くなりますが、分載するより一本にまとめた方が読みやすいと思いますので、続けます。

『世界』10月号には、それらしきものが二本あります。
しかし両方とも8月6日,7日の朝日釈明を、正面から取り上げたものではありません。

波佐場清という人の、
「最も重要な隣国にどう向き合うか」
という論説があります。項目は次の通りです。
   ■朴大統領のメッセージ
   ■韓国の失望
   ■「安倍カラー」への不信と警戒
   ■「土台は村山談話と河野談話」
   ■問題は女性の人権
   ■ボタンの掛け違え
   ■浮かび上がる韓国の重要性

首尾一貫韓国側に立った論説で、久しぶりに『世界』の雰囲気に浸りました。つまり、「世界」を読んだのは久しぶりです。その中に次の文章があります。

(p.23)
そこに入る前に「慰安婦」問題をめぐるいまの日本社会の異様といえる状況にも触れておかねばならないだろう。朝日新聞がこの問題に関する記事の一部を取り消したことに関連して、メディアによっては、まるで「慰安婦」問題そのものがなかったかのような大合唱である。しかし、問題の核心はそこで論じられているように朝鮮半島における直接的な強制連行がどうのということではない。問われているのは「慰安婦」として自由を奪われ、尊厳を傷つけられた女性たちの人権であり、国際社会でもそこに焦点が当てられているのである。

一応コメントします。

  1. 捏造記事に怒るのは「異様」ではありません。

  2. 「記事の一部を取り消した」
    朝日が取り消したのは一部ではありません。

  3. 「メディアによっては、まるで“慰安婦”問題そのものがなかったかのような大合唱である。」
    どこがそんなことを言っていますか?

  4. 「問題の核心はそこで論じられているように朝鮮半島における直接的な強制連行がどうのということではない。」
    それが「問題の核心」なのです。何故なら、それが核心でなければ日本固有の問題でなく、世界範囲の一般論になります。
    それが核心であるからこそ、日本は非難されているのです。

同じ『世界』に
[メディア批評]神保太郎
(1)慰安婦問題の矮小化を許すな
というのがあります。項目は下の通りです。
   異様なリアクション
   週刊誌もこぞって攻撃
   顧みられない被害実態
   何から議論を始めるべきか

(p.54)抜粋
これらのメディアの文意は、「吉田証言は虚偽だったのだから、日本軍による強制連行の事実などない」「強制連行があったとしてもそれは現地の将兵が勝手にしたことだ」「16回も報じて世界に恥をまきちらし、日韓関係までこじらせた朝日はけしからん」――と要約できよう。

要約はほぼそれで正しいのでしょうが、神保太郎氏はそれに対する反論を、“識者”“他メディア”の見解を紹介することによって行っています。つまり、「吉田証言は虚偽だったけれど、日本軍による強制連行はあった」、朝日記事の根拠はウソだったが、言ったことは正しい、という訳です。朝日新聞もこのような応援を得て、この線でがんばってみますかね?

 

「しんぶん赤旗」
安倍政権とメディア
都内でシンポ
美辞麗句の本質暴こう
2014年9月18日(木)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-18/2014091814_01_1.html
に、下の記事があります。

白石氏は「政権は女性ファッション誌『VERY(ヴェリィ)』3月号が憲法問題を扱うことを事前につかんで出版社に攻撃を仕掛けてきた。朝日新聞の誤報への今のバッシングはそのメディア攻撃の象徴といえるだろう。大変な権力の行使がすすんでいるときに一番怖いのは記者が萎縮してしまうこと。記者がより力を発揮するために、外から励ますことも必要だし、政権監視も一社でがんばるのでなく、志あるジャーナリズムが手を組んで70年前の悲惨さを繰り返さない行動を取ることが必要ではないか」と述べました。

女性ファッション誌『VERY(ヴェリィ)』というのは、我が家の女家族に聞いてもその雑誌そのものを知りませんが、圧力をかけた“政権”というのは何でしょうか? これは内容が分からないのでパスします。(“VERY 憲法”で検索しましたら、らしきものが出て来ました)。
朝日新聞の誤報に対するバッシングは、政権でなく同業メディアが行っているのです。前段に“政権”の一言を置くことによって、あたかも朝日を“政権”がバッシングしているかの如き印象を与えようとしているのだと思います。
今まで朝日新聞にバッシングされ続けたのが“政権”です。
「志あるジャーナリズムが手を組んで」
というのは、やってみたらどうですか? さすがの毎日や中日も、与しないと思いますよ。

同じ「しんぶん赤旗」には下の記事があります。
2014年8月12日(火)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-12/2014081202_01_1.html
河野談話の真実性揺るがぬ
小池氏、「朝日」検証報道で主張
フジテレビ番組「慰安婦」問題で討論

日本共産党の小池晃副委員長は10日放送のフジテレビ番組「新報道2001」に出演し、「朝日」が掲載した旧日本軍「慰安婦」問題の検証記事などをめぐって自民党の萩生田光一総裁特別補佐、日本維新の会の橋下徹代表(大阪市長)らと討論しました。(中略)小池氏は、吉田証言の問題について「信憑(しんぴょう)性がないことははっきりしている」と指摘した上で、その証言の取り消しによって強制性をすべて否定するような言動を批判しました。(後略)

 

以上、「世界」も「赤旗」も、そして大もとの「朝日」も、今後はこの方向で行くようです。

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