彼らは加害者の横にいたのではないか

野村勝美(ノムラカツヨシ)
2003.12.12

S 様

いつも貴重な資料をお送り下さいまして、ありがとうございます。
A様から12月の例会は18日とお聞きし、参加させて頂きますと申しあげたのですが、あとで手帳を繰ってみると同日、会社の役員会が栃木で設定されていました。(私の勤務先は本拠地が栃木にあるのです)。年末のこととて会食も設定されています。迂闊で失礼致しました。残念です。新年会には是非とも加えていただきたいと存じます。
さて、「正平協」メンバーに関することですが、中枢幹部のいずれかは、「北朝鮮」「チュチェ思想」と、強い接点があると思うようになりました。『月曜評論』平成15年7,8月号での枡本矛人氏の論文が明確に指摘しておりますが、一部カトリック教徒と左翼過激派との多くの接点がインターネット・サイトで検証でき、実に驚くべきものです。「正平協」の北朝鮮や日本人拉致に関する発言について、その語るもの、語らないものに、余りに偏りがあるので(ほとんど朝鮮労働党の主張と同じです)、相当に親密な関係にあると想像はしておりました 。最近、八尾恵の『謝罪します』という本を読んで、

彼らはむしろ、加害者の横にいたのではないか。

との疑念を持つようになりました。疑念は今、ほとんど確信に近いものとなっています。
朝鮮と日本の関係についての本を集中して読んでいます。膨大な出版物がありますので、今はほんの入り口にすぎません。きっかけはやはり北朝鮮の工作船、それに続く拉致事件であったでしょう。
先日、
『「よど号」事件 三十年目の真実』(島田滋敏 著、草思社)
を読み終えました。著者は事件の対策本部事務局長であった日航OBの方で、当事者ならではの緊迫したレポートです。特に金浦空港における、犯人との交渉での日本と韓国の方針の差は、深く考えさせられました。詳しく引用できませんがハイジャック犯たちは、乗客全員を乗せて平壤へ飛べ、その要求が受け入れられないなら自爆すると脅迫します。
「日本政府の本音は、犯人とともに乗客を北に送りだし、国際赤十字を通じ、人道主義に訴えて解決をはかりたいということだ。」(p.146)
それに対して韓国の方針は、
「日本の皆さんは、人命が大切だから早くピョンヤンへ行かせて、ピョンヤンで解決しろといっているようですが、それは間違っております。ピョンヤンへ行ったら、また大変な事態になりますよ。
日本の皆さんは北朝鮮の体制がどんなに恐ろしいかをご存じないのです。なにがなんでもピョンヤンへもっていけ、といっておりますが、北朝鮮はふつうの国じゃないんだということを知ってもらいたいのです。・・・まず、お客の何人かは帰って来られないでしょう。」(p.142)

乗客を乗せては絶対に金浦を飛び立たせない、それが朴正煕大統領の意志でした。結果として韓国の姿勢が正しかったことは、今になれば明らかです。
この乗客の中には、福岡での学会に出席するため多くのお医者さんがいました。聖路加病院の日野原重明先生もいました。濱尾文郎神父(現枢機卿)も乗客でした。医師は北朝鮮にとって喉から手のでるほど欲しい人材でした。宗教者は(教育者とともに)洗脳して工作員に仕立てる最適の職種でした。もし平壤へ行っていれば、濱尾枢機卿 には、洗脳されたとは思いませんが、過酷な体験が待っていたでしょう。

この本を読み終えたあと、「よど号」犯人の妻となり、有本恵子さん拉致を実行した八尾恵という女の
『謝罪します』(文藝春秋社)
を読みました。
この本は、出版されたことは知っていたのですが新聞評で「自分勝手な甘い言い訳」というようなことをチラッと読んで、今まで関心を持ちませんでした。どの新聞の誰の評であったかは思い出しませんし、私の理解が評者の意向を正しく捉えていたかどうかも分かりません。しかしこのような評があり私が理解したとおりのことが評者の意向であったとすれば、その評者はとんでもない者です。
勿論、言い訳はあるでしょう。言い訳が皆無の文章などありません。あらゆる文章が、云ってみれば言い訳です。更に文章そのものの質からして、あるいは、ライターがいるのかも知れません。しかしここには明らかに一人の女の真実の声が、痛哭が聞こえます。それであるからこそ有本恵子さんのご両親の前で「床に伏し、土下座し」たとき、お母さんは恵子を抱き起こそうとしたのでしょう。この女性、八尾恵の運命の岐路は、

「そして二十歳の冬、私の人生の転機が訪れました。」(p.35)

それが"チュチェ思想研究会"と接点を持ったことでした。彼女は、"チュチェ思想研究会"のことを割と詳しく書いています。引っぱりこまれたのです。"オルグ"されたのです。勿論それまでの彼女の生活に、そうなってゆく要素があります。それを狙い、観察し、道糸を垂らしておく者がいるのです。あとがきに彼女は、地下鉄サリン事件を知って、自分との相似に衝撃を受けたと語っています。洗脳されてゆくのです。

その、彼女の語る"チュチェ思想研究会"の雰囲気、臭いが、よく似ているのです、「正平協」に。正平協の指導層は必ずどこかに『チュチェ思想』『北朝鮮』と接触があった、と想像します。見事に波長が合っています。"同期"しているのです。更に、松浦悟郎司教や木邨健三氏に並ぶもう一人の大物、ノートルダム清心女子大学の田代菊雄教授という人が「日本キムイルソン主義研究会」の会長に就任しています。この人はカトリック信徒のようですが、金日成、金正日、すなわち"チュチェ思想"を賛美してきた人です。詳細はここ、 http://www.cnet-ta.ne.jp/juche/ に出ておりますが、要点を転記します。

−−−−−引用−−−−−

キムイルソン主義の旗を高く掲げ、広範な人々とともに
日本キムイルソン主義研究会代表者会議
 日本キムイルソン主義研究会の代表者会議が7月12日、北海道で開催された。

 チュチェ思想国際研究所の尾上健一事務局長が来賓として挨拶をおこない、キムイルソン主義は今日、世界の人々のなかに深く根を下ろしている、今代表者会議がキムイルソン主義の旗を高く掲げ、幅広い人々とともに活動していくという大きな意義をもって開催されたことを嬉しく思うとともに、今後も力を合わせて活動していくことを決意するものであると述べた。

(この尾上健一という人も八尾恵の引っ張りこみに重要な役割を果たした人物です。後述)

 つづいてノートルダム清心女子大学の田代菊雄教授が基調報告をおこない、朝鮮問題は日本の政治の要であり、日本とアジアの平和と密接に結びついていると指摘し、活動の柱として第一にチュチェ思想を学び広めること、第二に日朝友好運動を全国でおこなうこと、第三に自主と平和のための大衆運動を力強くおこなうことを提起した。
 会議では日本の社会運動の第一線で活躍する人々が新役員に選出され、新会長には田代教授が就いた。

−−−−−引用、終わり−−−−−

再び、八尾恵『謝罪します』より

「四月十五日の金日成の誕生日に神戸の三宮近くの総聯でお祝いの立食パーティがあり、無料で招待されました。この日は北朝鮮の祝日でした。チュチェ研は、総聯と深い繋がりを持ちながら、チュチェ思想の啓蒙、宣伝を続けていました。・・・『日本青年チュチェ思想研究会』のリーダーは尾上健一という人物でした。彼は群馬大学医学部の学生でしたが、大学を中退したと聞いています。現在は日本キムイルソン主義研究会常任委員長兼チュチェ思想国際研究所事務局長です。」(p.44)

「尾上氏は何度も北朝鮮へ渡航して、朝鮮労働党から直接指示を受けて日本で活動しているようでした。労働党から勲章もいっぱい受けていました。」(p.45)

こうした人々に影響を受けつつ彼女は、二三ヶ月の積もりで、通学していた保育専門学校には一年間の休学届けを、アパートはそのままにして平壤へ行きます。そこでよど号犯人の一人と結婚させられるのです。最初からその目的でピックアップされたのでした。そして「活動家」となってゆき、有本恵子さんの拉致を実行します。

ここに出る尾上健一氏と田代菊雄教授が、今もなおペアを組んで活動しているのです。私はこれらのことから、日本人拉致という悪行について彼らが正面切った非難を一切しないのは、単に北朝鮮や金正日に親和感を持つという以上に、彼ら自体が正に加害者そのものであった、 あるいはその横にいた、としか思えないのです。

以下は私の友人への個人的なメールですが、追記としてお読み下さい。

−−−−−

八尾恵の手記を読んで、「正平協」の幹部グループは必ず「北朝鮮」との接点があると確信しました。北朝鮮と正平協の論調(波長とでもいいますか)は、まったく同じです。
これは日本だけでなく韓国でも、教育関係者、宗教関係者は北朝鮮工作員の最適の的であったのです。(最近ではドイツ国籍の哲学者、宋斗律(ソン・ドゥユル)氏(ミュンスター大講師)が問題になっています)。私はいま戦後の朝鮮,韓国:日本の書物を集中して読んでいますが、日本においては朝鮮総聯を拠点としてすさまじい「工作」が行われました。今もなお行われているでしょう。最高の標的は政治家、宗教者、教育者でした。理由は明白です。影響力が大きく、一度引っ張り込むと足抜けしない(脅かしやすい)からです。工作はどのように行われるでしょうか。

1.思想教育(正面から。オルグ。引っぱり込み。新興宗教の"布教"と同じです)
2.女(男)
3.金

実際にはこれらは単独でなく、『標的』に適切であると思える混合比率でセットで使われるでしょう。使う順序も考慮されるでしょう。一つで十分な人間もいるでしょう。そして その網に入ったあと、

4.脅迫

があります。普通はやわらかい「警告」です。「忠告」と云えるかも知れません。された方は「脅迫された」と認識しないでしょう。しかし政治家、教育者や宗教者には十分に効きます。

「正平協」の連中も、足抜けできぬ状況に囲い込まれていると思います。2003.12.12
 

「カトリック正義と平和協議会」の異様
北朝鮮工作船

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