北朝鮮工作船

2003年7月23日(水)午後の国会党首討論で、小泉純一郎首相は23日午後のイラク復興特別措置法案に基づく陸上自衛隊のイラク国内の派遣先について「非戦闘地域」との認識を示す一方で、
「イラク国内の地名とかを把握しているわけではない。どこが非戦闘地域かと聞かれても、分かるわけがないじゃないですか」
と答弁した。民主党の菅直人代表が「非戦闘地域というのはフィクションではないか。1カ所でも言ってみて下さい」と追及したのに答えた。イラクの治安が悪化し、派遣先の慎重な決定を求める声が強まる中で、強弁とも受け取れる首相の発言は今後、論議を呼びそうだ。

 菅氏は首相答弁を受け、
「『分かるわけがない』とは、すごい答弁だ。開き直りだ。このような無責任な首相に我が国の内閣を任せられない」
と批判した。

([毎日新聞7月23日] ( 2003-07-23-20:25 )による。)

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私はこの答弁を誠実なものと思いますが、菅さんは「開き直り」と受止め、報道メディアも多く否定的に伝えました。しかし、分からない、という以上の真面目な答えが、他にあるでしょうか。分からない、だからこそ、民間でなく軍人を派遣するんじゃないですか。それとも、民間人ならいいというのでしょうか、危険であろうと?

世の中に、保証された安全な場所はありません、
一坪たりと。
どこで何が起こるか分からない、そうしたものでしょう。

だから、ごく当たり前の認識をそのように受け取ることができず、「開き直り」と罵るだけで議論を打ち切るのは、自らに何の主張も持たないからです。
議論は、本当は「分かるわけがない」というところから、それを前提にスタートすべきものです。分からない、だからどうするのか。行かせるのか、行かせないのか。

菅さんは、日本人は一切行くなというのでしょうか?
それならばそのように主張すればいいのです。
それはそれで政治的選択であり、私は日本にとってマイナスが大きいと思いますが、一つの明確な主張です。きっちりした討論になります。

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日本海、日本の排他的経済水域は、当然「非戦闘地域」でした。 安全であるべき場所でした。しかし、戦闘はありました。

平成13年12月22日午前一時 、鹿児島県・奄美大島の北西沖で不審船発見、海上保安庁は防衛庁から九州南西海域における不審船情報を入手し、直ちに巡視船・航空機を急行させ、同船を捕捉すべく追尾を開始しました。同船は巡視船・航空機による停戦命令を無視し逃走を続けたため、警告射撃ののち、更には船体射撃を行ないました。 同日午後10時9分、工作船からの攻撃により、巡視船「あまみ」「きりしま」「いなさ」が自動小銃等による銃撃を受け、「あまみ」「いなさ」が応戦、 同10時13分、工作船は自爆し、沈みました。

海上保安官三名の負傷で終わったのは僥倖でした。巡視船の人たちは、明らかに「命」を懸け 、戦闘したのでした。工作船は翌平成14年9月11日、水深90mの海底より引き揚げられ、北朝鮮のものであると断定されました。金正日はそれを認め謝罪しました。

この事件は、日本人の精神風土を変える、画期的な出来事でした。戦った海保・巡視船の男たちを、私は称えます。死者のなかったのは、ほとんど僥倖と云えます。奇跡と云っていいでしょう。

下の画像は右配列が、「巡視船あまみ操舵室 平成14年5月15日 霞ヶ関合同庁舎3号館展示」にて撮影、
左側が、「北朝鮮工作船“長漁3705”、平成15年7月15日「海の科学館」展示物の撮影です。












 

巡視船「あまみ」(楕円は展示部分を示す)

北朝鮮・工作船「長漁3705」

船名 長漁3705
全長 29.68m
全幅  4.66m
速度 33ノット(60km)
総トン数 44トン























 


「あまみ」




























 

「あまみ」

上の観音開扉によって格納された「子舟」
全長 11.21m
全幅  2.50m
速度 50ノット(93km)
総トン数 2.9トン
エンジン スウェーデン製3百馬力×3

 

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