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5月7日〜5月11日、台南、台中へ行ってきました。台南駅からタクシーでほぼ一時間、烏山頭水庫(珊瑚潭)という場所へ行きました。皆さまご存じでしょうが、1942年(奇しくも私の生まれた年)5月8日が命日の「八田與一」という日本人技師がいます。その5月8日、60年を過ぎてなお毎年、台湾の人々によって「墓前祭」が行われています。台湾の教科書にも八田技師は記述されているそうです。60有余年、異国の地で異国の人々に命日を祭られると云うのは 、世界史の中でもおそらく稀有のことです。

日本の教科書には出たことがありません。

良き次の世代を育てるのに父の時代の悪いことだけを取り上げ、
「そのような悪いことをするな」
と教えるのと、
その時代にもすばらしい日本人がいたことを教え、
「そのような人になろう」
と教えるのと、教育がその目的を果たすのに、どちらが有効でしょうか。過去の悪いことに頬かむりせよと言わない。しかし見事な日本人もいっぱいいたのです。

教育の第一義は、良きことが何であるかを教えることだと思います。戦後教育の根本的な誤りが、そこにあると私は思うのです。濱尾枢機卿がいつもおっしゃいます。
『悪いことをする人間がいなくなっても、世の中は良くならない。良いことをする人間が必要である。』

私はこの人を司馬遼太郎先生の「台湾紀行」によって知りました。又、台湾紀行の中に“老台北”として登場する蔡焜燦氏ご夫妻とも、会食の席で隣になる奇遇がありました。10年以上を経て、今年ようやく、その墓前祭に参列できました。

日本人の悪口は聞き飽きました。この年になると無性に「良い日本人」を知りたくなりました。

李登輝元総統の八田與一技師についての講話(草稿)があります。慶応三田で話される予定 だった、まぼろしの講話です。